「もし大切な人が亡くなったら」
考えたことはあるでしょうか。
亡くなって逝く人がいれば、見送る人もいます。
大切な人や家族を亡くした人を「遺族」と呼ぶなら、生きている人はすべて遺族になりえます。
大切な人や家族との別れがきたら悲しみ、落ち込む。それは自然なことです。
ですがその悲しみにケアができていないと、遺族が孤独や絶望を感じたり、自責の念にかられたり…。
遺された家族の心や身体にも様々な反応が表れます。
私は以前病棟看護師、現在は訪問看護師として働いています。
病院や在宅で看取りをしたときに、様々な遺族の反応をみてきました。
悲しみはあっても穏やかに受け入れている遺族、思い出話をする遺族、泣き叫ぶ遺族。
その時にどう関わればよかったのか、振り返ることもあります。
そのような場面に関わったことがなくても、あなたは身近な人を亡くしたときに辛い思いをしたかもしれません。
また、親しい人が遺族となったときに、どのように声をかけてよいか分からなかったことがあるかもしれません。
そのような時にするケアをグリーフケアといいます。
グリーフケアとは遺される、遺された家族にするケア。遺族が立ち直れるように支援することをいいます。
この記事では
- グリーフ、グリーフケアとは何か
- グリーフケアはいつからするのか
- 家族への看護
について紹介します。
Contents
グリーフ、グリーフケアって何?
グリーフとは英語で死別などによる深い悲しみ、苦悩、悲嘆(ひたん:かなしみなげくこと)という意味があります。
愛しい人と死別した家族に対し、寄り添って支援をしながら悲しみから立ち直れるようにすることをグリーフケアと言います。
グリーフの過程
グリーフには4つの過程があると言われています。
- ショック期
- 喪失期
- 閉じこもり期
- 再生期
ショック期:死に直面したことがショックで呆然として現実感を喪失する
例)故人の話を避ける、仕事などに専念する
喪失期:死が受け止められず、感情が不安定な状態になる
例)号泣する、怒る、故人がまだ生きているように振る舞う
閉じこもり期:死を受け入れたことにより、自分の人生に価値観や日常生活に意味が見いだせず無気力な状態になる
例)自分を責める、食欲低下、睡眠不足、思考や判断力の低下
再生期:死を乗り越えて、新たな自分として積極的に他人や社会とかかわれるように活動できる状態になる
例)活き活きと生活できる
グリーフケア「予測される死」「予期しない死」
死別によるお別れには病気による「予測される死」と事故や災害のように「予期しない死」があります。
病気などによる予想できるお別れの場合「予期悲嘆」といい、あらかじめお別れを察知することで、悲しみを軽減できると言われています。
事故死のような突然のお別れは、心の準備ができていないためショックも大きいと言われています。
しかし予期悲嘆であっても、時間で悲しみを分散しているだけで、突然のお別れと同じように悲しいのは変わらないでしょう。
グリーフケアとはいつからするのか
ではグリーフケアとはいつからするのでしょうか。
病気などによる「予想できる死」の場合は、あらかじめお別れの準備ができます。
「予測できる死」の場合は主治医から家族にお話があるでしょう。看護師が療養している方の病状悪化や、死期が近づいていると感じた場合は、主治医に家族へのお話を提案しましょう。
看護師が医師よりも先に今後の経過を家族へ説明することは良くありません。まず病状説明をするのは医師、それをサポートするのが看護師です。
家族によっては看護師が先に病状の説明をすると「先生からそんな話を聞いていない」と戸惑われる方もいます。
まずは主治医から説明ができるように手配しましょう。
その場に看護師も立ち会うことで家族の反応を見ることができ、サポートができます。
しかし「予期しない死」の場合は、あらかじめのお別れの準備ができません。亡くなられた直後からすみやかなグリーフケアをすることが大切です。
グリーフケアの家族看護
グリーフケアを行うためのポイント
- 悲しみを肯定する
- 語り合う、思いを表現させる
- 最期を迎えるまでの過程を共有する
- お別れの儀式を一緒に考える
順に説明していきます。
悲しみを肯定する
日本人は自己表現が苦手と言われることがあり、悲しみを感じても周りを気にして感情を抑え込む傾向にあります。特に男性は悲しみの感情を強く抑え込む傾向があります。
家族へ「悲しいと感じていることは自然なこと」と肯定をしましょう。
語り合う、思いを表現させる
最期を迎える方、亡くなった方への思いを外に表現することで心の整理ができます。
思い出話をしたり、手紙を書いたりすることが効果的と言われています。
自分の気持ちを表面に出すのが苦手な人は、写真や遺品などを手元に置いておくとスムーズに表現できることも。
最期を迎えるまでの過程を共有する
病気などによる予想できるお別れの場合「予期悲嘆」といい、あらかじめお別れを察知し心の準備ができます。
主治医から家族に今後どのような経過をたどるのか説明があっても、受け止められないことはあります。家族は戸惑うこともあり、当然の反応と考えられます。
家族の希望があれば今後の身体の変化を説明しても良いですが、そのような家族はいません。「現実を受け止めること」に精一杯です。
療養している方の身体の状態をみながら「変わったこと」「少しその先に起こりうること」を共有していきましょう。
お別れの儀式を一緒に考える
お通夜や葬儀、お別れ会といった亡くなった方とお別れする儀式をすることで、現実として受け止めることができます。
生前、お別れの儀式について希望があったのか家族に聞いてみるのも良いと思います。家族はどのようなお別れの儀式をしたいのか聞いてみましょう。
お別れの儀式中に大切なことは感情を抑えないこと。気丈に振る舞うのも分かりますが、感情を抑えれば抑えるほど、遺族は悲しみから乗り越えにくくなります。
グリーフケアをする注意点
グリーフケアをするときは家族を一方的に励ましてはいけません。「寄り添う」姿勢が大切です。無理に声をかけることでプレッシャーになり、悲しみの感情を表出できなくなります。
グリーフケアするには家族との関係性が大切
関係性のない看護師が、いきなりご家族にグリーフケアをしようと思ってもできません。それまでの療養されている方、ご家族との関係性が大切になります。
日頃から良い関係をつくっていることでグリーフケアができます。
なかなか家族と出会えないこともあるかもしれません。療養されている方から家族のお話を聞いたり、主治医からの説明の時は家族の都合の良い日を調整し、家族ともかかわれる機会をつくりましょう。
グリーフケアはいつからする?家族看護とは?
この記事では
- グリーフ、グリーフケア
- グリーフケアとはいつからするのか
- 家族への看護
を紹介しました。
今まで遺された家族とどのように関わったら良いのか、分からなかったこともあると思います。
この記事を読んであなたの身近な人を支えられたら嬉しいです。
看護師さんはグリーフケアって勇気のいることかもしれません。
どうして良いか分からなくても、ただ家族のそばにいるだけでもグリーフケアになります。
遺された家族が悲しい思いのままで過ごさないように、グリーフケアをしていきましょう。
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