細菌感染が疑われたときに、クラビット(レボフロキサシン)を処方されることが多いかと思います。いつもは錠剤で処方されるクラビット。
しかし!経鼻栄養や胃ろう・腸ろうがある方に
医師「経管、胃ろうだから細粒で処方!」
または看護師「経管、胃ろうだから細粒で処方してください!」
ということありませんか?クラビットは錠剤のままで大丈夫です。
Contents
飲み込みができない方に
飲み込みの機能が低下している方、病気があり飲み込みができない方。胃や腸は正常に機能している方に、経管栄養(経鼻栄養、胃ろう・腸ろう)を選択することがあります。
これらは胃や腸に直接水分、栄養、薬を送ることができます。チューブ(管)を通して水分・栄養補給、治療ができます。
経鼻栄養
鼻の穴から食道を通り胃までチューブを通します。チューブが抜けないよう、鼻や頬に固定のテープをします。
メリット
短期間で飲み込みが改善する方に向いています。
デメリット
チューブやテープによる不快感があります。交換頻度が約1か月のため、交換の度に苦痛があります。認知症の方は管を抜く危険があります。
胃ろう
お腹から胃に直接穴を開け、栄養などを入れます。
メリット
胃ろうは洋服で隠れるので、見た目はわかりません。
デメリット
手術が必要です。半年に1回交換が必要です。認知症の方はチューブを抜く危険があります。
腸ろう
胃ろうができない方に。お腹から腸に直接穴を開け、栄養などを入れます。
メリット
腸ろうは洋服で隠れるので、見た目はわかりません。胃ろうよりも誤嚥のリスクは低いです。(胃ろうよりも食道、気管への距離が遠いです)
デメリット
手術が必要です。胃ろうよりも細い管のため、胃ろうよりも詰まりやすいです。速く栄養を注入すると下痢になりやすいです。認知症の方はチューブを抜く危険があります。
クラビット細粒は管につまる
クラビット細粒を簡易懸濁し、与薬、つまったというインシデント。病院で何回も聞きました。在宅でも聞いています。クラビットを簡易懸濁するときは錠剤のままの処方で大丈夫です!
簡易懸濁法(かんいけんだくほう)とは
経鼻栄養、胃ろう、腸ろうの方は、管(チューブ)を経由して栄養や薬が体内(胃、腸)に直接入ります。薬をお湯で溶かすことで、管(チューブ)が閉塞しないメリットがあります。
錠剤など約55℃のお湯に溶かし、振り動かして10分置き、管から入れます。これを簡易懸濁法といいます。
この方法によって、砕いた薬よりも「配合変化の危険性減少」「投与医薬品が増える」というメリットもあります。
なぜ55℃で10分置くの?
カプセルを溶かすため!
「カプセルは37±2℃に保ちながらしばしば振り動かし、10分以内に溶ける」と日本薬局方で規定されています。10分間放置して37℃以上保つためには、最初の温度を55℃に設定します。
なぜクラビットは細粒で処方されやすいのか
クラビットは大きい!
クラビット500㎎の大きさは長径16.2mm、短径7.9mm。薄ピンク色のだえん形。
数ある薬のなかで大きいです。大きいから溶けづらいだろうという先入観があります。
ちなみにクラビット250㎎の大きさは長径13.7mm、短径6.6mm。黄色のだえん形。
クラビット500㎎よりは小さいですが、他の錠剤と比べると大きいです。
細粒=溶けると思い込み
「細粒だったら簡易懸濁でとけるだろう」と思い込みがあります。細粒でも溶ける、溶けないがあるので、注意が必要です。
悲しいかな、すべての責任は看護師に
- 感染が疑われる経管栄養の方
- 医師が「クラビット細粒」で処方 処方の欄に「簡易懸濁」とコメント
- 薬剤師が「クラビット細粒」を調剤
- 看護師が「クラビット細粒」を簡易懸濁し投与
- 詰まったのに看護師が気づき、医師に報告
- 白湯を入れた注射器で何度も流す
- 管のつまりが改善しなかったら、管入れなおし
- 患者さん、利用者さんに負担が大きい!!
様々なヒューマンエラー(人が起因する誤り)をすり抜けて患者さんや利用者さんに悪影響を与えるのですが、最後に患者さんと直接関わるのは看護師。看護師がインシデントレポートを作成し、要因、対策を考えます。看護師だけを責められることが多いです…。
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特殊な薬も
タケプロンOD錠
温度が高い(56~61℃)と固まります!水では溶けます。簡易懸濁した他の薬(10分放置したもの)の投与直前に混ぜましょう。
ビオフェルミン
お湯でどろどろ、片栗粉のようになります。簡易懸濁とは別で水で溶かして投与ましょう。
塩化ナトリウム、酸化マグネシウム、マグミット
配合変化しやすいです!単独で簡易懸濁しましょう。他の薬を投与したら、何もまぜてない白湯を流した後、単独で投与しましょう。
簡易懸濁がだめな薬剤
薬の構造上、簡易懸濁ができない薬剤もあります。
- ペンタサ
- スローケー
- ヘルベッサー
- スローケー
- リスモダンR
- アダラートCR
- テオドール
- ヘルベッサーR
簡易懸濁する前に確認を
全ての薬は溶かせません。溶かすことで効果が変わるお薬も。簡易懸濁する前には医師・薬剤師に確認しましょう!
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